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ジャパンサーチで探究学習(前編)

立教大学の小牧龍太です。この連載では、まとめて「MLA施設」などと呼ばれることもあるミュージアム(Museums)、ライブラリー(Libraries)、アーカイブズ(Archives)を探究学習に取り入れる方法、実践例などを紹介します。いずれは地域のミュージアム、図書館、アーカイブズを活用するための方法なども提案していきたいと思っていますが、まずは、デジタルアーカイブの話から始めます。デジタルアーカイブを使った「キュレーション授業」が探究的な学習に効果的である、という報告例があるためです ([1], [2];これについては次回もう少し詳しく触れますが、気になるかたは、いま出典のスライド論文を読んでいただいてもいいかもしれません)。

 「デジタルアーカイブ」とは、主に、「ある機関が所蔵資料をデジタル化し、データベースに登録し、幅広い利活用を目的としてウェブ上に公開しているもの」です。和製英語では、という話もあり、こまかく定義しようとするとややこしかったりもするのですが、ここでは割愛します。「デジタルアーカイブ社会」を目指すという国の方針 ([3]) もあり、近年、多くのミュージアム(博物館、美術館、科学館……)、図書館、アーカイブズなどによって作られているほか、学術資料を所蔵する大学、研究機関などでも公開が進んでいます。

 さて、雨後の筍のように林立するデジタルアーカイブ、どこに何があるのか、そもそも、デジタルアーカイブ自体をどうやって探したらいいかわからない。そんな課題を解決し、デジタル資料の利活用を促進するための取り組みのひとつに「ジャパンサーチ」というものがあります。今回はまず、このジャパンサーチの機能をいくつか紹介します。

横断検索、ギャラリー

 ジャパンサーチは、第一には、さまざまな分野のデジタルアーカイブと連携し、ワンストップでの横断検索を可能にするものです。たとえば「富士山」に関するデジタル化資料を探したかったら、ジャパンサーチ1カ所で検索を実行するだけで、連携している71機関148データベース (2022年1月25日現在)に収録されている資料の中から「富士山」に関係するものをすべて見つけ出すことができます。各施設・機関が公開しているデジタルアーカイブをまず探し出し、それぞれで検索を実行し、検索結果を見比べ、とりまとめる、という手間がなくなります。先行する同様の取り組みに欧州のEuropeana、米国のDigital Public Library of America(DPLA)などがあります。

 このジャパンサーチ、横断検索だけでなく、あらかじめプロのキュレーターによって、あるテーマにそってキュレーションされたコレクションを閲覧できる「ギャラリー」という機能もあります。ここから教材を見つけることもできるかもしれません。

ジャパンサーチトップ画面。上部の画像は登録されている資料の中から選ばれたものが入れ替わりで表示される。
ジャパンサーチのギャラリー。キーワード検索でギャラリーを探すこともできる。

マイノート

 さらには、個人の探究のテーマに沿ってデジタル資料をキュレーションしていける「マイノート」という機能も存在します。ノートへの登録は、検索結果や詳細表示画面に表示される「ハート」のアイコンをクリックするだけで完了し、画面右上の、当初は「最初のノート」という文字が表示されているところをクリックすると登録した資料のリストを見ることができます。ハートのアイコンはSNSでは「お気に入り」や「いいね」のことが多いですが、ジャパンサーチでは「ノートに登録」なんですね。ノートは異なる表示形式を試してみたり、内容を整理したりすることもできます。

検索結果画面。ここで画像などを一覧しながら「ハート」を押していくことができる。
各資料ごとの詳細表示画面。ここでも「ハート」を押せる。
ノートを表示したところ。ノート自体にメモをつけることができるほか、表示形式を変えれば資料ごとにもメモを追加できる。

 このマイノートはウェブブラウザの機能を使って情報を保存しているので、ユーザー登録などをしなくても気軽に利用できます。一方で、使用中のコンピュータ外への保存やブラウザ外への共有のためには「エクスポート」という操作をしなくてはならないので注意が必要です

 というわけで、今回は、ジャパンサーチの基本的な機能と、すでにキュレーションされたコレクションを検索・閲覧できる「ギャラリー」、自分の興味や問いにしたがってキュレーションを行える「マイノート」を紹介しました。次回は、「キュレーション」と「探究的な学習」との間には親和性がある、ということについて見ていきます。


[1] 大井将生(2021)「学校教育で使われるアーカイブになるために:⼩学校・中学校でのジャパンサーチを活⽤した⻑期実践」(第4回東京⼤学学術資産アーカイブ化推進室主催セミナー​​「使われるデジタルアーカイブになるために」発表資料).

[2] 大井将生, 渡邉英徳(2020)「ジャパンサーチを活用した小中高でのキュレーション授業デザイン:デジタルアーカイブの教育活用意義と可能性​​」『情報アーカイブ学会誌』4巻4号,pp.352-359.

[3] デジタルアーカイブジャパン推進委員会・実務者検討委員会 (2020)「3か年総括報告書​​: 我が国が⽬指すデジタルアーカイブ社会の実現に向けて」