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探究すべきテーマを探す

安藤幸央です。本連載では「探究」のための各種ツールとその活用方法を紹介していきます。過去の記事はこちらです。連載第4回目は、とくべき探究テーマ、興味をひく探究テーマをどうやって探せば良いのかを指南します

良い探究テーマとは?

 探究学習では様々なテーマを扱います。与えられたひとつのテーマを皆で探究することもあれば、いくつかのテーマから選ぶことも、まったく自由にテーマを選ぶこともあるでしょう。探究テーマの選び方は重要で、適切なテーマを選べるか、選ばなかったかで、結果が大きく左右されます

 探究テーマとして重要な要素はいくつかあります

  • 自分で探せる、調べられるテーマであること。図書館や書籍、インターネットを使って、情報を探せること
  • 自分自身が得意なこと、興味のあること、探究するのが楽しいこと
  • 調べたことをまとめることで、誰かの役に立てること(皆の役に立つことでなくとも良い)
  • 誰もが思いつくことではなく、誰もが見落としていたり、見過ごしていたりしたけれども、実は興味深いこと

 そして、いろいろな探究テーマに取り組むなかで、総じて面白い!役に立つ!素晴らしい探究!と感じるのは、面白いテーマに真面目に取り組むか、真面目なテーマに面白く取り組むかのどちらかだと私は考えています

探せるテーマが良いテーマ

 探究すべき興味深いテーマが見つかったとしても、それについて詳しく調べたり、本を探すことができたり、誰かに聞くことができたりしないとなかなか前に進みません。それでも必死で探せば、なにか情報の糸口は見つかるかもしれませんし、誰かに詳しい話を聞けるかもしれませんが、せっかくの良いテーマも必要な情報が集まらなければ、まとめや結果も見栄えがしない中身の薄いものになってしまいます

 ある観点として、ネット上に情報があるか、探せるかという視点で考えます。インターネットが一般的に普及したのは1990年代、皆さんがごく普通に利用しているWebブラウザと同様のごくごく初期のものが登場したのは1992年です。さまざまなネット上の情報をアーカイブし続けている Internet Archivesが登場したのは 1996年のことで、開設当時は寄贈があったデータのみのアーカイブでした。Internet Archivesが世界中の主要サイトを自動的に保存し、アーカイブし始めるようになったのは2010年以降になります。つまり2010年以前の情報は、世の中に存在していたとしても、ネット上にはあまり存在しないということが言えます。

Internet Archive に残っている立教大学の最も古いWebページ 1997年1月のもの
1997年の Yahoo! Japan 今の面影はない、とてもシンプルなリンク集であった
Internet Archive の Wayback Machine で過去の Webサイトを探す様子

 Internet ArchiveWayback Machineというサービスでは、WebサイトのURLを入力すると、アーカイブされている過去のWebサイトをさかのぼって見ることができます。ただし、全ての情報が完全にアーカイブされているわけではないので、トップページだけの場合や、残念ながらレイアウトが崩れている場合もあります。それでも過去のWebサイトの様子を調べることができるでしょう。

 最近の事柄であれば、ネットで様々な事柄を探し出すことができます。電車の中で見かけた広告に登場していた人物を検索したり、テレビ番組で紹介された新しいレストランの情報を探したりするとすぐに見つけられるハズです。ネットには、あらゆる情報があるような気がしますが、1990年以前の情報となると、ネットにあっても僅かか、まったく情報が無い場合もあります。古い書籍や新聞、誰かの記憶にしか残っていない古い情報も実は数多くあるのです。書籍や新聞、雑誌であれば、50年くらい前までであれば、Amazonや古書、図書館で探し当てることが期待されます。

 古い情報を探してまとめたり、歴史を遡ってさまざまな事象を探し出したり、自分の祖先や、住んでいる地域の歴史を遡って調べていくことは、ジャーナリズムや歴史の学習としては重要かもしれませんが、短期間で調べてまとめなければいけない探究テーマとしてはあまりにも難しすぎます。本を探す、人を探して話を聞く、場所を探して調べるという「探せる」ものをテーマとして扱うと、そこで得られた多くの情報からまとめるに値する情報、伝えるべき情報も見えてくるはずです

自分自身が得意なこと、興味のあること、探究するのが楽しいこと

 ここで少し注意点を述べておきます。自分が好きすぎることをテーマにすると、テーマの範囲が広すぎ、思い入れが強すぎて、いつになっても満足のいく探究ができずに、よくない落とし穴にはまりがちです。ある音楽ジャンルが好きな人、あるアニメ作品や漫画作品が好きな人、あるブランドやテーマパークが好きな人など、好きなことをテーマにすれば探究も楽だろうと考えがちですが、実はそうでもありません。すでに色々な事柄を知っているからこそ情報の上の層だけを撫でるようなまとめになりがちです。そういった場合は、より狭い分野を深く調べると興味深い探究になるでしょう。自分が好きなことで、いままで知らなかったことを深掘りして知ることのできる良い機会にもなると私は考えています。

一人で考える、皆で考える、また一人で考える

 グループやチームなど複数人で、ある探究テーマに取り組む際、いちばん良い成果を引き出す手法がありますそれは一人の時間も、皆の時間も、両方大切にすることです。いきなり皆で相談せずに、一人一人考えたこと、一人一人で調べてきた事柄を持ち寄って皆で共有し、そこからまた思いついたり、探すべき情報を見出したり、分担したりします。そうすることで一人では無理だったことに気づけます。

 また一人で考えたり調べたりする時間を大切にすることで、誰か一人の意見に引っ張られることなく、多様性をもった情報としてまとめていくことができます。チームワークの大切さは重要ですが、単に仲良しというだけで全員が同じ行動をすることが良いわけではありません。集団スポーツと同じで、得意不得意を受け入れた上で、個々の良さを生かした集合こそがチームなのです。

全ての書籍を集めるアレクサンドリア図書館

 Internet Archiveは、古代アレクサンドリアに古代最大かつ最高の学術機関として栄え、その後、戦火と略奪によって失われたと言われる、現存しないアレクサンドリア図書館をインターネット上に甦らせることを目的としたデジタル情報を全世界の人々が将来的に活用できることを目指したプロジェクトです。ネット上の情報の保存はもちろんのこと、電子書籍や動画、音源、画像、ゲームなどの保存にも取り組んでいます。

 最近多くの家庭に浸透しつつある、スマートスピーカー Amazon Alexaは、アレクサンドリア図書館の頭5文字をとったものと言われています。ありとあらゆることを知っている未来の図書館は、もう「本」の形をしていないのかもしれません。

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