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ティーチャーライブラリアン養成におけるルーブリックを活用した評価

中村百合子です。本連載では、図書館・情報スペシャリストの養成プログラムの世界最先端と言えるプログラムについて報告しています。第6回第7回では、すべてをオンラインで提供している、カナダ・アルバータ大学のティーチャーライブラリアン養成プログラムを概観しました。今回はその養成教育における学修の評価法に焦点をあててご紹介します。なお、本稿は2019年夏に札幌で開催した国際シンポジウムにおけるBranch教授の発表原稿(英語)の翻訳です。

 第6回で同大学院のティーチャーライブラリアン養成の基礎科目は小グループでのディスカッション(またはゼミ形式)で進むと述べました。そのディスカッションのテーマはいろいろですが、まずは最初の発言をオンラインに投稿することが求められます。その、最初の発言の評価指標が次のルーブリックです。

不可
創造的で、よく考えられており、よく書けている、課題読書をよくまとめた学術的貢献。
(4ポイント)
ほとんどの課題読書をまとめた、よく書けている学術的貢献。
(3ポイント)
合格とみなすことができる学術的貢献。しかし、よくまとまっていない、すべての課題読書をまとめていない、または文法や文章の形式的なミスがある。
(2ポイント)
学術的貢献が不十分である。まとまっておらず、かつ/または学術的水準に達していない。
(1ポイント)
学術的貢献が、ユニークなアイディアと、すべての読書や情報源や追加の調査(例えば新しい研究、実践例、政府文書、専門的な文献)から学んだこと、そして個人的/専門的な経験への魅力的なつながりを表している。
(4ポイント)
学術的貢献が、魅力的なアイディア、すべての課題読書/情報源から学んだこと、そして個人的また専門的な経験へのはっきりとしたつながりを表している。
(3ポイント)
学術的貢献が、課題読書の一部またはすべてからのアイディアを表しており、個人的また専門的な経験にいくらかつながっている。
(2ポイント)
不充分かもしれない、かつ/または、課題読書への理解を示していない。
(1ポイント)
メタファー、また/もしくは、魅力的な個人的/専門的な経験にもとづいて、他の人がつながりをみいだせるように招いており、ディスカッションを広げて高めるべく、よく考えられた疑問を出している。
(4ポイント)
学術的貢献がはっきりしており、提示されたアイディア/経験が、ディスカッションに取り組みそれを広げるいくつかの方法を提供している。グルーブディスカッションのための疑問が含まれている。
(3ポイント)
学術的貢献ははっきりしているが、つながりをみいだしたり、ディスカッションを広げたりすることが簡単ではないかもしれない。そして/または、考えるべき疑問を含んでいない。
(2ポイント)
学術的貢献がさらなるディカッションを妨げている。
(1ポイント)
学術的貢献が与えられた単語数に収まっており、文章内に正しく引用がされており、APAスタイル*で正しく参照文献が引用されている。
(4ポイント)
学術的貢献が少し長すぎるか短すぎるかもしれない(50単語)。そして/または、情報源の引用ができていないかもしれないし、APAの引用や参照スタイルに2、3のミスがあるかもしれない。
(3ポイント)
学術的貢献が与えられた単語数を守っていない(100単語以上)。引用がされていない。そして/または、APAの引用や参照スタイルに多くのミスがある。
(2ポイント)
学術的貢献がAPAの引用や参照スタイルを正しく用いていない。
(1ポイント)
*APAスタイルとは、アメリカ心理学会 (APA) の論文執筆のスタイルガイド

 

 同養成プログラムにおいて、小グループでのディスカッションは大変重要なので、学期の半ばと学期末の2回、ディスカッションへの参加・貢献を評価します。たいていの科目で採点の25%がこれにもとづいており、次のルーブリックを用いています。

不可
プレゼンス
(最大16ポイント)
3日間のディスカッションの会話の流れの中で、一貫して価値ある存在感を維持している。グループの各メンバーと十分に関わって、情報源を共有し、自分以外の参加者の貢献を称え、より精緻なものとし、さらなる貢献を促している。ディスカッションのまとめでは、メンバーが持ち返ることのできる重要なまとめや、洞察に満ちたさらなる疑問を提出している。
(14-16ポイント)
ディスカッションの会話の流れの中で一貫して存在感を維持している。グループの各メンバーときちんと関わり、適宜、ディスカッションの流れに反応している。
(11-13ポイント)

ディスカッションの会話の流れの中で、ある存在感を維持している。グループの各メンバーと一度しか関わらなかったかもしれず、そして/または、ディスカッションの流れに適宜、反応できていないかもしれない。
(11-13ポイント)

ディスカッションの会話の流れの中で、ある存在感を維持できていない。グループのメンバーたちと関わっておらず、または、トピックからずれた形で反応したり、ペースを乱したり、さらなる参加を妨げたりしている。ディスカッションのまとめでは、メンバーが持ち返ることのできるものやさらなる疑問を提出していない。
(0-8ポイント)
他者への反応
(最大17ポイント)
ディスカッションのスレッドを常に追っており、創造的でオリジナルな介入でディスカッションを新しい段階に進め、また/もしくは、談話を進める新しいディスカッションをはじめている。
(14-17ポイント)
個人として興味や専門的な知識・技能のあるトピックに関わって独自の考えやひらめきを提出している。
(11-13ポイント)
反応は適切であるが、議論の段階を進めてはいない。個人的な専門的な知識・技能または興味を披露したかもしれない。
(9-10ポイント)
反応が単純すぎ、他の人たちの貢献をそのまま繰り返しているだけである。他の人たちに反応していない。
(0-8ポイント)
概念や原則の統合やまとめ
(最大17ポイント)
理解を支えるように、授業の資料に加えてリサーチや専門的な文献、ソーシャルメディアに出ている話題やアイディア、ウェビナー、ビデオ等をほぼ毎回の投稿で共有し、反応は基本原則の深い理解を反映している。
(14-17ポイント)
たいてい、授業の資料が適切な時に参照されている。基本原則に対するある理解を反映している。ディスカッションごとに一つか二つの新しい情報資源を共有し、学習を支え高めている。
(11-13ポイント)
授業の資料が時々参照されており、反応は基本原則の理解を反映している。学習を支え高めるような追加の情報資源はめったに共有していない。
(9-10ポイント)
授業の資料は一度も、または滅多に、反応の中で参照されていないが、基本原則の初歩的な理解はある。学習を支え高めるような追加の情報資源を共有していない。
(0-8ポイント)

 このように、カナダのアルバータ大学大学院での学校図書館スペシャリストになるための学修は、オンラインでの授業への参加、貢献を丁寧に追って、評価がされます。このような評価は、筆者が知る限り、北米の大学の伝統とも言えるようなもので、アルバータ大学のプログラムでのみ行われているわけではありません。しかし、すべてをオンラインで行う、最先端の図書館・情報スペシャリスト養成プログラムの授業の評価については、管見の限り、議論は少なく、ルーブリックの公開も貴重ですので、ここに、Branch教授の報告で示されたルーブリックを全訳しました。

 さて、次回からは、欧州、スペインのバルセロナ自治大学(Universitat Autònoma de Barcelona)が提供している、学校図書館や公共図書館の児童サービス、そして読書に関わるスペシャリスト養成のプログラムを紹介します。

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