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似ているものを調べる、似た顔を調べる、似た本を調べる

安藤幸央です。本連載では「探究」のための各種ツールとその活用方法を紹介していきます。連載第3回は、さまざまな「似ている」情報を探すツールを取りあげます。

顔から探す

顔の特徴と遺伝子との関係性(欧米人を対象とした調査)
論文 “A genome-wide association study identifies five loci influencing
facial morphology in Europeans, 2012″
より

 世界には自分に似た顔の人が三人居ると言われています。自分の知り合いと、教科書に載っている偉人の肖像画が似ていて驚いたことがあるかもしれません。この話は都市伝説のようにも思えますが、実はそれなりに根拠はあるようです。数千人に及ぶDNAを分析した結果、ある特定の五つ遺伝子が鼻の形や目の位置、頬骨といった顔の特徴をになっていることが解明されています。遺伝子もデジタル情報のようなパターンの組みわせだということです。遺伝子情報が同じ一卵性双生児でも育ってきた環境や、食生活の違いなどによって顔は異なってきますが、赤の他人でも、顔にまつわる遺伝子情報が同じ、または似通っていれば、似た顔になり得るということです。

 Twin Stranges というサービスでは、AIを活用し自分の顔と似ている他人を世界中から探すことができます。もちろんこのサービスに登録している人だけなので、元となるサンプルが限定的ですが、興味深いサービスです。私自身の顔写真で試したところ、双子だ!と思えるほどの類似性はなく、なんとなく似ている人が見つかりました。(※ご自身の顔写真をこのサービスにアップロードする場合、ネット上に写真が一般公開されることになります。十分な配慮、承知の上でご利用ください。)

検索の元となる、本コラム著者の顔写真
Twin Strangersで見つかった、似ている数人の中でマッチング度トップの2人

 Google Arts & Culture というサービスでは人工知能を活用し、自分の顔写真やペットの顔写真から似ている絵画を探し出すことができます

https://apps.apple.com/app/arts-culture/id1050970557 (iPhone/iPad版・無料)
https://play.google.com/store/apps/details?id=com.google.android.apps.cultural&hl=ja
 (Android版・無料)
著者の自撮り顔写真からよく似た、Stanislaw Wyspianki(ポーランドの画家)の作品を見つけ出した様子
ペットの顔写真から絵画中の似たものを探し出す様子。Googleのサンプル画像より

言葉から探す

 検索エンジンGoogleが使われ始めたころ「Googleレシピ」という使い方が評判になりました。冷蔵庫に残った食材、例えば「ナス 牛肉 トマト」という三つの食材をキーワードとして検索すると、「牛肉、なす、トマトのオイスターソース炒め」といった、それらの食材を使ったレシピが見つかる次第です。

 この複数キーワードで検索するという技は、さまざまな情報を探す際にも役立ちます例えば児童書として有名な『エルマーの冒険』『モモ』『ぐりとぐら』といったお気に入りの書籍タイトルを検索キーワードとして入力します。すると、ちょうど同じくらいの年代向け児童書に加えて、おすすめの他の書籍や児童書のランキング、書評など、この3冊にまつわる情報を芋づる式に見つけ出すことができます。こういった探し方は単に「児童書」などと検索してもなかなか探し当てられない情報です。等価な固有名詞三つから五つのキーワードを検索することで、さらに似通った情報が得られるのです。

 皆さんも同一のジャンルで気に入った本、役に立った本などのタイトルを複数検索キーワードとして入力し、書籍を探してみてください。同じ好みの人がおすすめする本、自分が知らなかった役立つ本を見つけることができると思います。

ニュースから探す

 自由研究やレポート、課題などを進めていく中で、常に新しい情報を入手したい場合があります。例えば「雷」に関する最新情報を日々入手したいと考えた場合、Googleアラートのキーワードに「雷」を設定し、通知の頻度や、情報源、言語などを設定すると、無料で毎日または、新しいニュースがあるごとにメールで通知してもらえます

Googleアラートで「雷」を検索した結果

レポートのコピー&ペースト対策にも

 「似たものを探す」という便利なツールは、レポートや課題、論文などで誠意にかけた引用や、引用元を示さない不正な利用の発見にも使われています。多くの大学で Google Classroom などの機能が活用されている Google for Education の一部、「アサインメント」では課題の出題や、生徒の提出物の分析と採点が行えます。
 「アサインメント」には学生の提出物にある引用の方法が正しいか、またネット上の文章を大量に丸ごとコピーしたような文章は無いかをチェックしてくれる「独自性レポート」という機能が存在しますこの機能は教師だけでなく学生も利用することができ、意図せず盗作と疑われることが無くなります。比較対象はデジタルデータ化された4,000万冊以上の書籍とWeb上にある論文などの情報です。もちろんこのツールの認識精度をかいくぐって文章をコピーすることや、代筆などといった不正手口はありますが、こういったツールの存在が抑止力になり、適切な引用方法を会得する手助けにもなります。

Google for Education 独自性レポート(日本語にも対応しています)

 先人が積み重ねた知見の上で新たな発見や考察を得ることを「巨人の肩の上に立つ」と言います。こういった言葉が示すように各種研究やレポート、探究における様々な情報で、いままで世界中で誰も考えようとも調べようともしなかった完全なる独自性を持った題材はほとんどありませんいつも誰かが先に調べていたり、誰かが先に考察していたりしているのです。そういった巨人の探究を、この連載で紹介しているツールを活用して自分の中に取り込み、それこそ巨人の肩に乗っているがごとく、高い視座を持てるようになりたいものです。

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