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学校図書館と公共図書館との連携

浅石卓真です。前回は学校図書館による資料提供の実際について、「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」の収録事例をもとに検討しました。

 学校図書館で提供されている資料は、必ずしも学校図書館の蔵書だけとは限りません。むしろ、実際の授業での情報要求に応えるためには、学校図書館の蔵書だけでは不十分なことの方が多いと思われます。そのため学校図書館による資料提供では、他の図書館との資料の共有が必要となります。特に、学校図書館と比べて蔵書規模の大きい公共図書館と連携体制を構築しておくことで、学校図書館は大きな恩恵を受けることができます。

 図書館間の連携が全国規模で展開されるのは、1990年代半ばから文部科学省が継続的に行なってきたモデル事業を契機としています。これら一連のモデル事業は、全国でモデル地域を指定して学校図書館の活性化を図り、その波及を目指したものです。モデル事業は学校図書館におけるコンピュータや情報ネットワークといったハード面の整備から始まり、蔵書情報のデータベース化と資料の検索・貸出・流通システムといったソフト面の整備を経て、学校図書館支援スタッフという人的整備へと変化してきました。この過程で、地域の公共図書館との資料貸借等を含むネットワークの形成が試みられています。千葉県の市川市や袖ヶ浦市の例が初期のものとしてよく知られています。

 それでは現在、公共図書館と学校図書館との連携はどの程度行われているのでしょうか?学校図書館全般に関する調査として、文部科学省による「学校図書館の現状に関する調査」と、全国学校図書館協議会による「学校図書館調査」の二つがあります。前者は悉皆調査として隔年で行われており(2008年以前は毎年で、2016年以降しばらく調査が行われていなかったが、2021年に4年ぶりに調査結果が公表されました)、後者は都道府県ごとに3%の学校を無作為抽出して毎年行われています。以下では、文部科学省のウェブサイトで容易にアクセス可能な2004年度以降の「学校図書館の現状に関する調査」[1]を参照して、連携の現状を見てみようと思います。

図1 公共図書館との連携状況

 図1(左上)は公共図書館と連携している学校の割合、図1(右上)は公共図書館から資料提供を受けている学校の割合の経年変化を示しています。参考までに、図1の左下・右下にはその他の連携形態である定期的な連絡会の実施、司書等が学校訪問を受けている学校の割合を示しました。図1(左上)から、公共図書館と連携している学校が増加傾向にあること、特に小学校では連携している学校が8割近くまで達していることが分かります。また、公共図書館と連携している学校の割合は、概ね資料貸出を受けている学校の割合と連動しています。小学校で特に連携が多くなされているのは、中学や高校と比べると蔵書数が少なく、資料提供では必然的に公共図書館との連携が前提になるためと考えられます。

 公共図書館から学校への資料提供の目的は、学習支援と読書支援に大別されます。前者は調べ学習用の資料、後者は学級文庫や朝の読書用の資料提供がそれぞれ典型です。学習支援のための資料提供としては、「環境問題」「国際理解」といった特定のテーマの資料を予め用意しておき、それらを提供する試みが挙げられます。金沢(2018)は、公共図書館のWebページを分析して、学校への団体貸出の約半数が、上述したようなセット貸出であると指摘しています[2]。このセット貸出は、同じテーマについて資料提供が毎年求められる場合には有効と考えられます。他にも類似の試みとして、国立国会図書館国際子ども図書館による学校図書館セット貸出があり、そこでは世界の地域ごとの資料が貸出用に用意されています。

 これまで『学校図書館』『図書館雑誌』等の機関誌では、公共図書館の司書が出張して教員への研修を実施したり、児童・生徒を対象とした学校図書館の利用ガイダンスを行ったり、指導案の作成を支援したりといった事例が多数紹介されています。しかし全国的に見れば、学校の教育課程に踏み込んだそのような取り組みは一部にとどまっており、主たる連携は資料の相互貸借です。これは、それだけ学校現場のニーズがあるためと思われます。なお、ここまで「連携」という言葉を使ってきましたが、これまでの事例を見ると、資料・人的資源・設備の貧弱な学校図書館を公共図書館が全面的にバックアップしている事例が圧倒的に多く、「連携」というより「支援」という方がふさわしいようです[3]。なお私立学校の場合は、公共図書館との連携はあまり行われていないようです。


引用文献:

[1] 文部科学省「学校図書館の現状に関する調査結果」(最終アクセス 2021/09/23).

[2] 金沢みどり「日本の公共図書館の学校支援 Web ページの現状と意義」『教育情報研究』 vol.34, no.3, 2018, p.3-18.

[3] 岩崎れい「学校図書館をめぐる連携と支援:その現状と意義」『カレントアウェアネス』 no.309, 2011, p.23-28.

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