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ひとり読みのスタートはハードルを低く

青栁啓子です。甲州市立勝沼図書館の子ども読書クラブ・カムカムクラブの活動を紹介しながら、「遊びと探究の間」をテーマに投稿しています。第3回目は予読本で読書へのアニマシオンをスタートするお話です。

 1回目で自己紹介2回目で図書館巡りを経験したメンバーは、3回目はまた少し緊張して来ている。それは「課題本を読んでくる」という初の宿題をやってきたからだ。読書へのアニマシオンでは、家であらかじめ本を読んできて会に参加するのが本来目指す形である。少しブッククラブらしくなってきたかな。

 前回貸し出した本は『アフリカ ないしょだけどほんとだよ』。読書レベルは小学校低学年向け。3、4年生には易しすぎると感じる本だが、<最初の宿題>というハードルを低く設定するにはこれくらいの本がちょうどよい。読むことが苦手な子も集中が続かない子も読めるような短い話が5つあり、それぞれに個性的な動物が主人公で登場する。ユーモラスで楽しい話なので、本嫌いの子にもおすすめしたい。なんといっても、1年間宿題に出した本を読まずに参加したDくんが、2年目のカムカムクラブで4年生にして初めて完読してきた記念すべき本なのだ。

『アフリカ ないしょだけどほんとだよ』竹下文子/作 高畠純/絵 ポプラ社 2003年

 その時のD君の様子は、これまでとは違っていた。部屋に入るなり、「読んできた! 読んできた!」とうれしそうにしていて、他の子どもにも読んだかどうか尋ねていた。私がいつものようにみんなに「今日、みんなこの本読んできたかな?」と問いかけると、またまた読んだことを大声でアピールしていた。実は全く読んでこないD君に2年目はどのように対処しようかと私たちもさすがに頭を悩ませ始めていたところなので、この変化は嬉しい驚きだった。

 この本でするゲームは椅子取りゲームとクイズを組み合わせた遊びだ。

素材)人数分のカードを作成する。カードには、主人公の動物の名前を〇〇と伏せ字にして本の文章を抜書きしている。5つの章から同数の文章を選ぶ。(20人の場合1章につき4つの文)

会場)人数分の席を5グループに分けている。グループ名は各章の主人公の動物名(ワニ、ヘビ、etc.)。子どもたちは好きな席に座っている。

進行)1、子どもたちは1枚ずつカードをひいて、自分だけでカードの文を黙読し、その文章がどの章の文かを考える。

   2、最初の子Aが立って前に来て、カードの文章(文は一部○○と伏字になっている)を読み上げる。その文の章のグル-プの席に移動する。移動先には、別の子Bが座っているが、BはAに席を譲る(写真ア)。次にBが回答者になり前に出て発表する。そうやって、全員が発表し、正しい席に座る。

   3、章ごとにグループで前に出て、〇〇を埋めながら、順番に並んで文を読み、今度は章タイトルの穴埋めクイズに答える(写真イ)。

   4、最後に自分が引いたカードが本のどこに出てきたか探し、本のページを開いて担当者に示したら終了(写真ウ)。
(写真ア)「この席かわって」
(写真イ)正しい席に移動が終わると掲示する
(写真ウ)どこに出てきたか探し中

 この遊びの良い点は、本もクイズ自体もとても簡単なのに、読んだからこそ遊びに加われること、ルールに従って席を移動するので体を動かすことである。カムカムクラブの読書活動には必ず身体活動を組み込むことにしている。そうすることで、グループの読書活動が遊びに変わる。

 カムカムクラブは、子どもの自立心を育てることを重視している。それが、自ら読み、自ら学ぶことにつながるからである。幼児の間は熱心に図書館のお話会に通ってくる親子も子どもが小学校に入ると、足が遠のいてしまう人が多い。読み聞かせを楽しんでいる子どもが、学校で読み方を習ったからといってそのまま全員が読み手になるわけではない。この読み聞かせからひとり読みへの移行期に、読む子と読まない子の差がつき始めるが、小学校では低学年の時ほど読書の時間を確保できない。

 また、成長の発達過程でも彼らは大きな壁に当たっている。『子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗りこえるための発達心理学』(渡辺弥生著 光文社新書 2011年)によると、9歳、10歳は、非常に注目に値すべき年齢だという。この年齢は「さまざまな認識の領域で、質的に変化する時期」であるが、「この質的な変化が、スムーズに移行できる人と、停滞してしまう人とに分かれやすく、全体的には、不安定になる時期」という。「そのため、認識の枠組みがステップアップできるように、適切な支援が必要なとき」なのである。カムカムクラブで対象年齢を小学3、4年生としているのは、そんな彼らの読書活動をサポートしたいからである。私たち大人にできることは、子どもが独力で読み始める際のハードルをなるべく低くし、これから読書の大海へと漕ぎ出す彼らを励ますことだ。

 例のD君はその後、3月まで全ての課題本を自力で読んできた。よかった。

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