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国際児童文学論の授業開発

年が明けましたところで、オンライン国際シンポジウムへのお誘いです。今月28日(金)朝5時から7時(日本時間)に、Road to the Future: Discussion for Developing the International Children’s Literature Courseと題したシンポジウムを開催します。登壇者やプログラム、参加のお申し込みについては右のチラシをクリックしてください。使用言語は英語です(日本語への当日の通訳はありません)。

 このシンポジウムは、2019年の8月に札幌で実施した、「Road to the Future: School and Children’s Librarianship 子どものための図書館サービス専門職養成の国際動向」と題したシンポジウムの続編です。この時のシンポジウムの内容は本サイトTANE.info【連載】世界最先端の図書館・情報スペシャリスト養成として報告していますが、アメリカ合衆国、カナダ、スペイン、そして日本の私たちが学校図書館と児童サービスの専門職養成の実際を報告しあいました。シンポジウムの後、登壇者のあいだで、互いの教育実践の向上のためになんらかの協力ができないかという話になりました。ざっくばらんな意見交換をとおして、特に児童文学という、養成や図書館サービス以上にすでに国際的な交流(流通)が起きている存在が、養成における国際連携を検討するテーマに最もふさわしく、またそこにいた全員が比較的わかりやすい形で利益を期待できるのではないかということになりました。

 そのようなシンポジウム後の意見交換をベースに、国際児童文学論の国際的な協働によるシラバス及び授業実践の開発を実現しようと、2019年の秋以降、メールやオンラインの面談で意見交換を続けてきました。しかしコロナ禍に見舞われたこと、またおそらくそれ以上に、学年暦が異なる私たちにとって、シラバスを書き実際に授業を担当するという教育実践のサイクルや忙しさのピークのずれが、思いのほか議論の進展と意見の取りまとめの障害になりました。2019年のシンポジウムで互いの養成制度はわかったものの、それぞれの教員が実際にどのような授業実践をしているのかをよく知らないことも、シラバス執筆や授業実践での協力を難しくしていると実感されました。そこで改めてシンポジウムの機会をもち、それぞれの大学院や大学での児童文学に関わる授業実践を報告しあい、それぞれの授業実践の特徴や児童文学の国際性へのアプローチの違いを認識し、協働への手がかりを得ることを目指すことしました。

 北米の児童サービスや学校図書館サービスの担当者の養成においては、外国や異文化に関わる資料は、長年、児童・ヤングアダルト向け多文化資料(multicultural resources for children and young adults)という取り上げ方が一般的だったと思います。日本ではそのような見方はむしろ稀で、海外の児童文学、国際児童文学といった語られ方が広まっていたと思います。ただ、英語でも近年はinternational children’s literature(国際児童文学)という議論が見られるようになってきていて、そのような角度からの児童文学の取り扱いへの関心が高まりつつあることが、この日、北米からの登壇者たちがこのテーマでのさらなる協働に積極的になった背景としてあったと思います。

 これに先立ち、筆者は今学期、勤務先の立教大学で、選択科目の「図書館情報資源特論」を使い、国際児童文学論に学生たちとともに取り組んでいます。結果、本学の司書課程では今年度、児童文学が、春学期に図書館司書コースで「児童サービス論」(担当・青栁啓子兼任講師)、秋学期に学校図書館司書教諭コースで「読書と豊かな人間性」(担当・中山美由紀兼任講師)と図書館司書コースで 筆者が担当する「図書館情報資源特論:国際児童文学論」という三科目で取り扱われました。児童文学や子どものための図書館サービスにかかわる専門性をいかに育むかというとき、このようなアプローチは少なくとも北米の図書館情報学大学院では取られないと思います。本質的に、また各国の制度上、さらには授業実践の国際連携を視野に入れるとき、どのようなアプローチが適切なのか、国際的な議論をとおして、改めて考えてみたいと思います。

(文責・中村百合子)

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